個人消費 2013 3 30

 「アベノミクス」という経済政策で、
株価(日経平均株価)が大きく上昇して、
一見すると、経済が回復してきたかのように思えますが、
問題は、個人消費が活況になるかが重要です。
 一部の報道では、
デパートで高級品が売れ出したという話があります。
私も、そこが気になったのです。
 多くの人は、「どうせ、東京の銀座にある高級デパートで、
高級品が売れた話なんか、庶民には関係ない」と思ったでしょう。
 しかし、やがて、庶民に関係してくる話です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という「ことわざ」があります。
この「ことわざ」は、中高年の方には、すぐわかるでしょうが、
現代用語としては使われなくなったので、若者は、知らないかもしれません。
 たとえば、あなたが、街で小さな雑貨屋を営んでいたとします。
不景気で、売れるものは、毎日100円の商品ばかりです。
それで、あなたは、うれしいでしょうか。
 そんなことはないでしょう。
できれば、380円の、いや980円の商品が売れてほしい。
欲を言えば、店の奥にある3980円の商品が売れてほしいと思うでしょう。
 考えてみれば、この10年、
献身的に働いてくれたアルバイトの時給は、変わっていない。
真面目で、一生懸命働く姿を見て、時給を上げたいと思っても、
経営が苦しく、とても、そういう余裕がない。
 「うちの店も、3980円の商品が売れるようになると、
景気が回復したと言えるのに・・・・・。
季節は春だが、景気の春は遠い」と、つい嘆いてしまう。
 さて、個人消費が大きく回復するには、
一般的に、「賃上げ」と「人口増」が必要と言われます。
これは、経済成長の「王道」と言えるでしょう。
 しかし、高級品が売れ始めることも、
個人消費が好転するための「呼び水」となるのです。
 「呼び水」という言葉も、古い言葉で、
今は、あまり使われていないかもしれません。
しかし、だいたい見当がつくでしょう。
 最初は、小さな歯車でも、
やがて、その歯車は、徐々に大きくなって、
最後には、巨大な歯車まで動くようになるのです。
大河も、源流まで遡れば、小さな湧き水から始まります。
 さて、アメリカでは、
株価上昇が、経済回復の「呼び水」となるかもしれません。
アメリカは日本と違って、一般家庭における株式保有率が高いからです。
これは、経済学では、「資産効果」と言います。
 株価上昇によって、家庭の金融資産が増えて、
つい財布のヒモが緩くなり、個人消費が活発になるという仕組みです。
 アメリカの金融政策に関しては、
アメリカの中央銀行と言われるFRBが、
金融緩和によって巨額の資金供給を続けても、
その資金が実体経済には流れず、
金融市場に直結してしまっているという批判があります。
つまり、金融経済は活況でも、実体経済は不振であるという批判です。
 しかし、「資産効果」によって、
実体経済にも、それなりに効果が出ていると思っています。
 さて、長々と書いてきましたが、
何が言いたかったというと、「経済学は、おもしろい」ということです。
経済学の本というと、入門書でも、「何回読んでも難解」という状態ですが、
世界第三位の経済大国である日本で、経済学が不振であるのは、おかしなことです。
いつの日にか、日本人で、ノーベル経済学賞を受賞する日が来ることを祈ります。
 聞くところによると、日本経済がバブル経済で絶好調の時に、
アメリカの高名な経済学者は、こう嘆いたそうです。
「日本の経済学は二流だが、日本経済は一流である。
一方、アメリカの経済学は一流だが、アメリカ経済は不振である。
なんでだろう」
この話は、今となっては、昔話となりました。

ケインズの受難 2009 9 27

書名 世界同時バランスシート不況
著者 リチャード・クー 村山昇作  徳間書店

 この本は、バブル経済崩壊後の日本について書いてあります。
(以下、引用)
資産価格が87%下がってもGDPを落とさなかった日本の経済政策は正しかった。
(中略)
しかし、日本のすごいのは、バブルが崩壊してからである。
1990年を境に商業用不動産価格は大暴落する。
一挙に価格が87%も下がってしまった。
ところが、日本のGDPは落ちていないのである。
落ちないどころか、過去18年間、一度もバブル期のピークを下回ったことがない。
(中略)
日本は、そこまで資産価格が下がったにもかかわらず、
GDPは落ちなかったし、失業率は6%に達することなく反転した。
「これでも日本の経済政策は間違っていたと思うのか」と言うと、
彼らは(欧米人は)、初めて「あっ」となるのである。
(以上、引用)
 バブル経済崩壊後の日本の経済政策については、
誤解されている点が多いと思います。
現在、バブルが崩壊したアメリカにとって、参考になると思います。
 さて、もうひとつ引用します。
(以下、引用)
これまでの経済学には、残念ながらバランスシート不況という考え方は、
全く存在しなかった。
ケインズも処方箋としては正しいことを言ったが、
なぜ財政出動なのかという説明は全くの的はずれだった。
財政出動というのは、バランスシート不況の時だけ効果を持つものであって、
それ以外の時は、むしろ逆効果になってしまうのである。
ケインズは、そのことに気付かなかったために、
ケインズが神様扱いになった戦後20年は、
多くの国々でバランスシート不況でない時も、
財政が乱用されてしまった。
しかし、バランスシート不況以外での財政出動は、
高金利やインフレ、そして資源配分の歪み等の逆効果をもたらし、
その結果、財政出動自体が全面否定されるようなことになってしまったのである。
1970年代に「ケインズは死んだ」などと言われたのは、
まさにそこからきている。
(以上、引用)
 つまり、この数十年は、「ケインズの受難」だったかもしれません。
しかし、師匠の学説を弟子が完成させるということも、歴史上あったと思います。
今、やっとケインズ理論は完成したと言えるでしょう。
「ケインズは死んだ」ではなく、「ケインズは始まった」でしょう。
 参考までに、バランスシート不況とは、著者によれば、
「借金でファイナンスされたバブルが崩壊し、
借金に見合う資産がなくなった民間が、
一斉に利益の最大化から債務の最小化にシフトすることで起きる不況である。
(中略)
 この不況では、バブルに乗って借金までして投資に走った人々が、
バブルの崩壊によって資産価格が暴落すると、
負債だけが残り、債務超過という状況になる。
資産より負債がはるかに大きくなるからだ。
そのような状況に置かれた企業や個人は、どのような行動を取るかというと、
当然のことながら、毀損したバランスシートを修復するため、
必死に債務を減らすようになる」と定義している。








































































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